作品概要
福島県の奥会津、金山(かねやま)町に暮らすマタギを描いた作品。2011年、東日本大震災・福島第一原発事故の放射能は130km離れた金山町の山奥にも降り注いだ。野生動物をはじめ、町の観光資源でもあるヒメマスも汚染された。
金山のマタギは、熊を撃つことだけが目的ではない。その刻々と変化する自然環境を診る役目もしている。山の神を崇拝し、山のおきてに従い獣を追う。自然とは何か。いま、放射能が山から人を遠ざけてしまった。奥山が荒れていく。
人と自然が共に暮らすための術をマタギの猪俣昭夫は教えてくれた。福島原発の事故以来、世界中が自然との共生へ歩み始めたと一瞬感じたのだが。
作品とその環境
福島県奥会津の金山(かねやま)町。町の総面積の90%は森林地帯。残りの10%に約2500人が住んでいる。特別豪雪地帯に指定されている程、雪深く厳しい冬を、金山の人々は春よこいを待ちわびながら過ごしている。
その町に一人のマタギ 猪俣昭夫が暮らしている。山ノ神を敬い、生きとし生けるものすべてを尊重し山に入るその姿は、自らが自然の一部と化しているように思える。人と野生動物が重なり合って暮らす金山町。マタギは、山の息づかいをかぎながら動物を狩る。必要な数だけ狩る、それがマタギの掟(おきて)だ。
雪山を降りると日本みつばちの蜂蜜を採っている。独特の社会性を守り、生き抜く日本みつばちをこよなく愛し、その恵みを頂く。その技法を町の住民や子供たちへ受け継いでいる。
2011年3月11日東日本大震災・原発事故の影響は、新潟県に隣接するこの遥か遠い金山町にも届いた。数少ない生息地を誇る沼沢湖のヒメマスに影響している。放射能に汚染されたヒメマスの調査、回復に参加している。
そして今年もまた雪山に入っていった。
伝統の"忍び猟"の狩猟法を守り一人クマを追い雪山に消えていった。奥会津金山のマタギ猪俣昭夫を追った。